「これが運命か……」
ノーと言えない典型的な日本人である僕は、
よく分からないまま、
うながされるままに手渡された"ソレ"を手に取った。
「なんだこれは……」
何だか得体のしれない黒い粒々が入った濁った液体。
ノーと言いたい気持ちがこみ上げるも、押しに弱い僕に言えるはずもなかった。
生き物の卵みたいな見た目をしている。
産まれるまでもう間もないのでは? なんて。
性格上断れなかったが、流石にこれは返すべきか?
もんもんと考えるも、あれだけ気前よく渡されては、
無下に出来ないのが生来の僕。
いったい何故こんなものが流行っているのか。
物体が飲み物の中に沈んでいることがこれほどの嫌悪感を生み出すとは。
においは悪くない。悪くないが……。
もう観念するしかない。
関係者の皆様もお待たせしていることだし。
わらって見ているが気持ち悪くなったら恨むぞ……。
らんらんと目を輝かせやがって……。
ずいっと一息にストローを吸ってみて――。
「これが運命か……」
のうのうとそんな台詞を宣った僕を許してほしい。
よくもまぁ長々と前置きをした上でこんなこと言えたものだ。
うらむならこの見た目をうらんでくれ。
なんというか、白玉を少し硬くしたような触感。
もっちりという表現が的確だろうか。
「のんでみた感想を、どうぞ!」
読心術でも心得ているのか、僕の感動を先読みしてくる。
「んー、まぁまぁかな」
でっちあげの感想を述べるも、それさえ見透かされたように笑われる。
下手に抵抗しても無駄だと悟った僕は、観念した。
さっきまでの嫌悪感はどこへやら、
リアルタイムでこの飲み物への気持ちが更新されてゆく。
あぁ、なるほど。これは流行るわけだ。
リクエストしたわけではないのに甘さ控えめなのも素晴らしい。
がっちり心を掴まれてしまったみたいだ。
とうとう飲み干した僕は、器を見返す。
うーむ、「THE ALLEY」の盆栽という商品なのか。
ご馳走様でした。
ざんねんながら僕はもう虜になっていた。
いまなら言える。
まっ直ぐな気持ちで、そう。
すきだ。タピオカ。